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税制改正における役員報酬の取扱は企業の恣意的利益操作を許さないという強
い意向が伺えます。その内容について説明いたします。 1.定期同額給与 (1)
定期同額給与とは
定期同額給与とは、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であ
る給与をいいます。事業年度を通じて毎月同額の役員報酬を支給しないと会社
の経費として認められません。従来も同じ考え方でしたが、明文化することによ
り厳しい対処をする意向が読み取れます。 (2)役員報酬の改定
増額改訂については「会計期間開始から3ヶ月以内の役員報酬の改訂」につい
てだけ認めています。会計期間開始から3ヶ月以内というと結局、通常決算日後
3ヶ月以内に開催する定時株主総会で役員報酬の額を改訂するということを想
定しています。
(3)改定前後で定時同額
会計期間開始から3ヶ月以内に役員報酬を改訂する場合、その改訂前と後で
の定時同額が要件とされています。
例 3月決算で2ヵ月後の5月末日頃に定時株主総会を開催して、役員報酬を増
額改訂
改訂前の役員報酬は月額100万円、6月からの改定後の役員報酬は月額
130万円とすると以下のようになります。
(4)役員報酬の減額 増額と同様に会計期間開始から3ヶ月以内に改訂することができます。
さらに会社の経営状況が著しく悪化した場合、その他これに類する理由がある場
合に限り、会計期間開始から3ヶ月以内でなくても役員報酬を減額改訂すること
ができます。この場合の改訂方法も、改訂前と改定後で定時同額が要件とされま
すので、1回改訂したらその後は決算日まで改定後の役員報酬額を動かさないこ
とが必要です。
2.事前確定届出給与 (1)事前確定届出給与とは
毎月定額の役員報酬を支払う定期同額の給与のほかに、従業員の賞与と
同様に7月や12月に役員に対して支払う給与(賞与)も、そのことを事前に税
務署に届け出れば、会社の経費とすることができるようになりました。これが
事前確定届出給与という制度です。 (2)届け出内容
以下のことを届け出ます。(事前確定届出給与のことを以下「臨時給与」と言
います。) -臨時給与を支給する役員の氏名・役職名
-臨時給与の支給時期・支給金額
-臨時給与の支給を定めた日・定めた機関(取締役会、株主総会など) -その役員の職務の執行を開始する日
-臨時給与を支給する理由、支給時期設定の理由
-臨時給与のほかに定期同額給与を支給する場合は、その支給時期・ 支給金額
-臨時給与を支給する役員の直前会計期間の給与の支給時期・支給
額 -その会計期間における他の役員の給与の支給時期・支給額
(3)届出期限
税務署に上記の事項を事前に届け出る必要があります。届け出期限は次
の(1)と(2)のいずれか早い日までとなっています。
@役員給与決議の株主総会等の日(その日が職務執行開始日以降である
場合には職務執行開始日)から1ヶ月を経過する日 A会計期間開始の日から4ヶ月以内 (4)届出た給与は払う
事前に届出た臨時給与は、その金額を支払わなければなりません。届出た
後に急激に業績が悪化して、資金繰りの都合上どうしても支払えないような場
合には、臨時給与を経費とすることができなくなります。 ※実際に支給した額が、届出額より多くても少なくても、差額ではなく、その支
給額全額が損金不算入の扱いになります。
(5)年1回払い役員報酬も届出必要
非常勤役員に対して年払いの役員報酬を支給している場合には、それを会
社の経費とするため、事前確定届出給与に含めて税務署に事前に届出る必
要があります。
※平成19年4月1日以後に開始する事業年度については、同族会社以外の法
人が定期給与を支給しない役員に対して支給する給与は届出が不要とされ
ました。
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