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個人が資産を譲渡し、売却金額が取得価格を超える場合、譲渡所得税が課税され
ます。一方、租税を回避する目的で恣意的に通常の取引慣行を全く無視した条件で
著しく低い価格による譲渡を行ったり、贈与する場合があります。課税の公平を図る
ために課税対象に取り込む方法がみなし譲渡という制度です。
1.みなし譲渡例
(1)法人に対する贈与
資産の価額についてみなし譲渡
(2)法人に対して、時価の2分の1未満の著しく低い価額の譲渡
時価との差額についてみなし譲渡
(3)限定承認に係る相続
(4)包括遺贈のうち、限定承認に係る遺贈
(5)借地権等設定の際の権利金等が、土地の時価の2分の1を超えている場合
不動産所得ではなく、譲渡所得として課税
(6)借家権消滅対価の額に相当する借家人の受ける立退料等が発生した場合
(7)遺産の代償分割による資産の移転履行、および離婚による財産分与があっ
た場合
2.時価課税例
みなし譲渡に該当する場合はその移転した資産の時価で譲渡があったものとさ
れます。
例1 3年前に600万円で購入した自家用車を自分の会社に贈与した。
贈与時の自家用車時価は400万円。
400万円−(600万円-減価償却費300万円)=100万円
〜短期総合譲渡所得の譲渡益
※減価償却費の計算
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( |
譲渡資産の耐用年数の
1.5倍の年数に応ずる旧
定額法の年償却率 |
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取得価額 |
× |
90% |
× |
× |
経過年数 |
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例2 被相続人の次の財産、債務を相続人が限定承認により相続
1000万円で取得した土地(時価3000万円) 借金1500万円
個人に対する限定承認による相続ですから、みなし譲渡になります。
時価3000万円で土地が被相続人から相続人に譲渡されたとみなされま
す。
3000万円−1000万円=2000万円
これが被相続人の土地の譲渡益となり、これに対する税負担は被相続人
が負うことになります。
相続人が被相続人の債務を弁済するために相続した土地を売却する際に
土地の相続時点までの値上がり益に対する税負担を相続人が負わないよ
うに配慮しています。
※限定承認に係る相続
プラスの財産よりマイナスの財産が明らかに多い場合には、相続放棄をすればよ
いのですが、どちらが多いかわからない場合があります。こうした場合に、相続し
た債務(マイナスの財産)を相続した積極財産(プラスの財産)から弁済し、債務超
過の場合は相続人固有の財産で弁済する責任を負わない、というのが限定承認
です。清算の結果残余財産があれば、相続人に帰属することになります。
限定承認をする場合には、自己のために相続の開始があったことを知ったとき
から3ヶ月以内に家庭裁判所に限定承認の申立てをしなければなりません。この
3ヶ月の期間は、一部の相続人が期間を経過していても、他の相続人について期
間が満了していないかぎり、最後に期間の満了する者を基準でよいとされていま
す。なお、共同相続の場合には、相続人全員の共同 でなければ限定承認の申
述はできないことになっています。つまり、相続人のうち1人でも反対する者がい
れば、相続放棄するのがよいでしょう。ただし、相続人の一部の人が相続放棄し
た場合には、その人は初めから相続人でなかったこと になりますから、この場合
はその他の相続人全員で限定承認ができます。
限定承認は、合理的な制度であるにもかかわらず、手続きが面倒さと相続人全
員で行わなければならないほか、税務上の問題もあり、実際にはほとんど利用さ
れいないようです。
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